事業成長に必要な3要素──ブランディング・広報・マーケティングの違いと優先順位とは?

経営者向け『広報&ブランディングの思考法』。今回のテーマは、「ブランディング・広報・マーケティングの違い」についてです。どれも企業の成長に欠かせない活動ですが、「何から手をつければいいのか」と悩む経営者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、それぞれの違いと取り組む順序を整理しながら、実践に役立つヒントをお届けします。

似ているようで異なる3つの活動。その違いとは?

ブランディング、広報、マーケティング。似たような活動にみえますが、どのような違いがあるのでしょうか?

端的に言えば、ブランディングは「在り方(Being)」、広報は「関係づくり(Relating)」、そしてマーケティングは「売るための活動(Doing)」です。それぞれ異なる役割を持ちますが、企業活動においてはこの3つの活動を連動させることが非常に重要です。

まず、ブランディングで「自社は何者か」「なぜ存在するのか」を明確にし、その価値観や姿勢を広報によって社会へ伝えていきます。そして、信頼を築いたうえで、マーケティングを通じてその価値を必要とする相手に届けて利用を促す。こうした流れを意識することで各々の活動を最大化させることができます。

なかでも広報は、人事・経営・マーケティング・IRなど、さまざまな部門をつなぐ“血管”のような存在。社内外との信頼関係を支える、企業の重要なコミュニケーションインフラといえるでしょう。

マーケティングと広報は、似ているようで違うのですね。

はい。なかでもよくあるのが「広告=広報」と誤解してしまうケースです。広告は、あくまでもマーケティングの一手法で、企業から消費者へ一方的に情報を伝えるもの。一方で、広報は双方向のコミュニケーションを通じて、相手との関係を築いていくことが本質です。

広報に即効性ばかりを求めてしまうと、本来目指すべき長期的な目標を見失ってしまう恐れがあります。広報は「モノを売るため」ではなく、「信頼を育てるための活動」という視点を忘れないようにしましょう。

広報の役割は、発信を通じて「行動変容」を生むこと

「ブランディング→広報→マーケティング」という流れが大切なのは理解できました。では、ブランディングで土台を固めた後は、何に取り組むべきでしょうか?

次は、広報が主体となり、ブランディングで定めたメッセージをステークホルダーに届ける取り組みが必要になります。ここで大切なのは、単に発信するのではなく「相手の行動を変える」、つまり行動変容を生み出す意識を持つこと。

紙媒体やWeb、SNSなど、接点(タッチポイント)は多いほど効果的ですが、重要なのは「誰に」「何を」「どう伝えるか」を整理したうえで、受け手がスムーズに次のアクションへ進めるよう導線を整えることです。行動変容のステップにもとづく導線設計と一貫性のある発信が、広報活動を成功へ導く鍵になります。

「行動変容」を促すという観点では、広報とマーケティングが重なる部分もあります。それぞれの役割は、どう区別すればよいのでしょうか?

広報とマーケティングはどちらも行動変容を促しますが、軸となる対象が異なります。

・広報は、社会や生活者全体など“ステークホルダーとの関係性”を築くことが目的
・マーケティングは、“顧客の購買行動”を直接促すことが目的

そのため、広報は主に未認知層や潜在層にブランドの信頼や好意を育む役割を担い、マーケティングは顕在的な顧客に具体的な購入を促す役割を担います。

たとえば、SNSのように両社が関わるチャネルでも、 まずは「このチャネルで何を実現したいのか」を明確にすることで、どちらの役割として進めるべきかを判断すると、役割分担がスムーズになります。

自社都合のマーケティングだけで生き残れる時代は終わった

広報とマーケティング、どちらも重要とは思いつつ、リソース的に両方に注力するのは難しいと感じることもあります。それでも、やはり両立すべきなのでしょうか?

私は、広報とマーケティングを掛け合わせて実装していくのが理想だと考えています。たとえば、セミナーで自社商品を紹介し、リードを獲得するのは王道のマーケティング施策ですが、今の時代、企業が“機能価値”を語るだけでは選ばれません。

反対に、近年では特に「なんとなくこの会社が好き」「この企業を応援したい」といった“情緒的なつながり”が、購買や企業支持の大きな決め手になっています。だからこそ、企業の価値観や姿勢に共感してもらえるような広報活動が、マーケティングの成果を大きく後押しするのです。

今後は、「広報」か「マーケティング」か、どちらかを選ぶのではなく、同時に進めていく姿勢がますます重要になるでしょう。

2024年に新しく定義されたマーケティングの考え方も、以前より広報に近づいている印象がありますね。

■マーケティングの定義

顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。

(公益財団法人日本マーケティング協会が2024年に制定)

■広報の定義

組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である。

(日本広報学会が2023年に策定)

今、求められているのは、「自社視点」ではなく「世の中視点」で価値を伝えること。広報とマーケティングは、手法こそ異なるものの、共通する“視点”を持ちながら両輪で進めることが、これからの時代には欠かせません。ブランディングで土台を整え、広報で関係性を耕し、マーケティングで成果をつかむ。それぞれの役割を整理しながら、ぜひ同時進行で進めてみてください。

広報とマーケティングについては、こちらも参考にしてみてください。

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